受講生の声

福島県 K.Kさんグリーフ専門士/ペットロス専門士養成コース(共通アドバンス)

講座に参加してどのように感じましたか。特に心に残ったことを3つ挙げてください。
1 二重過程モデル(シュトレーベ博士・シュト博士)
 このモデルは、「大切な人と死別した後、その状況にいかに適応するかについての枠組みを示したもの」で、悲しみと向き合う時と、悲しみを思い出さない時とを、行ったり来たりしながら人は悲しみの現実を受けとめていくということ知った。僧侶として、悲しみの場面に多く出会うことがあり、「だからこそ悲しみと向き合っていきましょう」という言葉かけをよく行っていたが、「喪失志向」と「回復志向」を行ったり戻ったりしながら生きていくことが大切になるということを知って、無理に「悲しみに向き合ってください」とか「悲しみから離れて日常に戻っていってください」とかと言わないように心掛けた。きっとその人にとって、今は「悲しみに向き合っている時なのだな」、または今は「悲しみに向き合えないでいる時なのだな」と考えることができるようになり、関わり方の幅が広がったと感じる。

2 子どものグリーフを支える3つのプロセス
 アドバンスコースでは、子どものグリーフに関する内容が繰り返し取り扱われていたが、その中でも子供のグリーフを支える3つのプロセスという内容が印象に残った。まず「理解する」については、老病死がタブー化されているような現代社会の中で、改めて老い・病み・死んでいくという事実をごまかさずに大人も子どもも「理解する」必要があると思った。そして、子どもがあらわすグリーフを周囲の大人が「感じ」とれるようにするために、子どもたちの身体を使った感情表出とか、防御的なふるまい、様々なエネルギーの発散の仕方などを注意深く観察して、その背景をふまえて子どもに接する必要があると思った。最後に「適応するプロセス」については、「グリーフヒール理論」のように、心の傷を癒して心の穴を埋める手立てとして、必ずしも適切ではない方法をとる場合があることを知ることができた。特に「グリーフヒール理論」では、表面に現れた行動が「暴力」「暴言」だとしても、心の空白の穴を埋めるものが他になかったのかもしれないと、子どもたちを深く捉える視点を学ぶことができた。

3 再会セラピー
 坂上香監督の映画に「プリズンサークル」というものがあり、観る機会を得た。受刑者の更生プログラムで「対話」を行っている刑務所のドキュメンタリー映画だったが、その中で二つの椅子が用意され、受刑者が「被害者」の椅子と「加害者」の椅子に交互に座って、それぞれの立場で考えていることや気持ちを表し、疑似的にそれぞれの立場に立って内的対話をするシーンがあり、今回の再会セラピーと似ている部分があると感じた。
再会セラピーは、相手(故人)に気持ちを伝えて、相手(故人)からも気持ちを伝えてもらうという内容だったが、自分自身が伝えたかった一言を伝えて、相手から言ってほしかった一言を探し出す、そのような時間だった。
テキストに「大切なのは、故人に関して話すことではなく、故人に対して話すことです」という文章があり、まさにその通りだと思った。もしかすると、仏事の現場は、故人に関することを話すに止まらずに、故人に対してお話をする、故人と対話をする場、そして教えに触れていく場なのではないかと思わされた。
今回の学びをこれからどのように活かしたいですか。
私は、特別支援学校の教員と僧侶を兼ねている立場である。
 兼職する大変さについてアドバンス受講生同士で話をした時に、「両方のお仕事は本当に大変だと思います。でも、教員のお仕事は子どもたちに関わって、子どもたちの未来に関係するお仕事です。その子どもたちのグリーフに携われるのが教員のお仕事ですね。お坊さんのお仕事は、人生の締めくくりや人生全体に関係するお仕事です。人は、人生の中で必ずグリーフに出会うことになります。そこに携われるのがお坊さんのお仕事です。その両方に関われることは、大変ですが、貴重なことです」とお話をしてもらった。自分自身の置かれた状況の大変さばかりに意識が向いていたが、この状況のもつ意味や有難さ、不思議さに気付くことができたお話だった。
 今回のアドバンスでは、子どものグリーフについて学ぶことができた。学校では子どもが実際に抱えたグリーフについて、寺では子どもさんをお見送りしたご家族のグリーフについて、難しい問題がたくさんあるが意識して取り組んでいきたいと思う。
 今回ベーシックコースを受講して、敏さんのご指導のもと、受講者の皆様と敬話敬聴の機会を得て、自分自身のグリーフに向き合う時間が得られたことは、大変貴重な経験だった。最終日に「自分のグリーフを見つめられるほどに、相手のグリーフに寄り添っていける。自分のグリーフについて掘り下げられたところまでしか、相手のグリーフを掘り下げられない。自分自身のグリーフを大切に」という言葉をいただいて、自分自身のグリーフにどれだけ向き合っていけるかが問われていると思った。そして自分自身のグリーフと向き合った上で「僧侶として、仏門にいるからこそ、グリーフを抱えている人たちにお伝えできることがあると思う」という敏さんの言葉のように、歩んでいけたらと思う。
アドバンスコースをベーシック受講生に進めるとしたら、どのように伝えたいですか。
ベーシックで学んだことを基に、自分自身のグリーフと向き合うことを通して、より専門的な知識と技能を身に付け、グリーフについて学び合う仲間と出会うことができる貴重な機会になると思います。
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